特定の不動産を売った場合の軽減の特例措置(一)
特定の不動産を売った場合の軽減の特例措置
(一)
譲渡した土地建物が自分の居住している住宅やその敷地である場合、優良住宅地の造成事業等のために土地を譲渡した場合など特定の場合については、一般の譲渡の場合にくらべて、税金が軽減される特例が設けられています。
主な特例としては、次のものがあります。
一、居住用財産を売った場合の特例
(一)居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
(二)所有期間1 0年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
(三)特定の居住用財産の買換え特例
(四)居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除等の特例
(五)居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の特例
二、優良住宅地の造成等のために土地を売った場合の税率軽減の特例
三、特定事業用資産の買換えの特例
四、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除
五、固定資産の交換の特例
六、特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合の1,500万円特別控除
七、中高層耐久建築物等の建設のための買換えの特例
それでは、各特例について順を追って説明していきます。
一、居住用財産を売った場合の特例
(1)居住用財産とは
居住の用に供している家屋とその敷地をいいます。
(2)特例の対象となる居住用財産の譲渡とは
①現に居住している家屋やその家屋とともに譲渡する敷地の譲渡をいいます。
②転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋とともに敷地を譲渡する場合も特例の対象になります (この期間内にその家屋を貸し付けていても、事業用に供していても適用になります)。
③災害などにより居住していた家屋が滅失してしまったときは、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡しても、特例の対象になります。
④転居後に家屋を取壊した場合には、取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ、その家屋から転居して3年後の12月31日までに譲渡したものが特例の対象になります。(なお、取壊し後にその敷地を貸し付けたリ、事業の用に供したりすると特例の適用は受けられなくなリます。)
(3)特定の親族や同族会社への譲渡は適用になりません
①配偶者、直系血族 (親、子、孫など)、生計を一にする親族、譲渡後にその家屋に居住する親族
②本人、配偶者、直系血族や生計を一にする親族が主宰している同族会社
(4)特例の適用は3年に1度だけ
居住用財産の特例は、3年に1度だけしか適用を受けることができません。
(注)譲渡の日:原則として引渡し日ですが、契約した日を譲渡の日とすることもできます。
特例を受けるための要件
(一)3,000万円特別控除例
この特別控除は、その者が居住用財産を譲渡した場合、その譲渡益から3,000万円の特別控除が受けられます。譲渡益が3,000万円に満たない場合はその金額が限度になります。
また、長期保有、短期保有に関係なく、利用することができます。
なお、収用等の特別控除または買換えなどの他の特例の適用を受ける場合やこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる場合には適用されません。
(二)所有期間1 0年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
この制度は、個人が、その年の1月1日において所有期間が10年を超える次の居住用財産を譲渡した場合に適用されます。
① 現に自分が住んでいる住宅
② 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡したもの
③ ①や②の住宅およびその敷地の譲渡
④ 災害によって滅失した①の住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えている住宅の敷地
ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものに限ります。
この特例は前で説明した3 ,000万円特別控除とセットで利用することができます。所有期間10年超という条件以外は、3,000万円特別控除の要件と同じです。
計算方法
3,000万円特別控除後の譲渡益について、次の税率で課税されます。
なお、平成25年より復興特別所得税として、所得税額の2.1%が別途かかリます。
・3.000万円特別控除後の譲渡所得のうち6.000万円以下の部分
10 %(ほかに住民税4 %)
・3.000万円特別控除後の譲渡所得のうち6.000万円を超える部分
15 %(ほかに住民税5 %)

(三)特定の居住用財産の買換え特例
特例を受けるための要件
この特例の適用が受けられるのは、令和5年12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を売った場合で、譲渡資産 (売った居住用の住宅やその敷地)及び買換資産(購入した居住用の住宅やその敷地)が、次の要件に該当する場合です。
計算方法
居住用財産の買換えというのは、今まで住んでいた住宅やその敷地を売って(譲渡資産といいます)、新たに居住用の住宅やその敷地を買う(買換資産といいます)ことですが、この特例の中味というのは、取得価額の引継ぎによる課税の繰延べといわれるものです。具体的には次のようになります。
①譲渡した資産の譲渡価額が買換えた資産の取得価額を下回る(譲渡資産の売却代金≦買換資産の購入代金等)場合には、その譲渡がなかったものとして税金はかかりません。
②譲渡した資産の譲渡価額が買換えた資産の取得価額を上回る(譲渡資産の売却代金>買換資産の購入代金等)場合には、売却代金のうち、購入代金に充てた部分については譲渡がなかったものとして税金はかかりませんが、購入代金を上回る部分(売却代金が残った部分)についてだけは譲渡があったものとして課税されます。
そして、その売却代金が残ったことにより、課税されることとなる場合の課税長期譲渡所得金額は、次の算式により計算されます。
(四)居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特例を受けるための要件
個人が、土地、建物を譲渡して損失が発生した場合には、通常はその損失分を他の所得(給与所得・事業所得等)から控除したり、繰越して控除したりすることはできません。(他の所得の損失を土地、建物の譲渡益から控除することもできません。)しかし、特定の居住用財産の譲渡損失についてだけ、その年の他の所得から控除(損益通算)することができますし、控除しきれなかった残額のあるときは、その残額をその翌年から3年間に繰越して各年の給与、事業所得等の総所得金額(合計所得金額が3.000万円以下の年分に限る) から控除できるようになっています。この特例の適用を受けられるのは、次の要件をそなえた居住用財産の譲渡損失です。なお、その敷地の面積が500㎡を超える場合は、その超える部分に対応する損失は除かれます。
なお、この繰越控除は、前述の住宅ローン控除との併用が認められています。
譲渡損失の損益通算の計算
その年に特定の居住用財産の譲渡の他に、土地建物の譲渡があって、その譲渡益がある場合には、その譲渡益から控除し、次に土地建物以外の譲渡所得、次に一時所得、そして利子所得、配当所得 (以上のうち源泉分離課税を適用したものを除く)、不動産所得、事業所得、給与所得、と雑所得から控除し、さらに山林所得、退職所得の金額から控除するようにして計算します。
譲渡損失の繰越控除の計算
繰越控除が適用される譲渡資産に係る譲渡損失の金額とは、譲渡資産に係る譲渡所得の計算上生じたその年の損失額のうち、上述した損益通算をしてもなお控除しきれない部分の損失とされています。
譲渡収入
ー
取得費
ー
譲渡費用
=
譲渡所得に係る損失額(赤字の額)
他の所得金額
一
譲渡所得に係る損失額
=
譲渡損失の金額(控除しきれない損失額)
繰越控除の対象となる金額
(五)居住用財産の譲渡損失の損益通算及ひ繰越控除の特例
例を受けための要件
損失が自分の住まいである土地、建物を譲渡して損失が発生した場合には、買換えをしなくても、譲渡損失の金額のうち譲渡資産の住宅借入金等の残債からその譲渡資産の譲渡価額を控除した差額を限度として、他の所得との通算及び翌年以後3年間の繰越控除ができる制度です。この特例の適用を受ける場合の要件は、次のとおりです。
要 件
①個人が平成16年1月1日から令和5年12月31日までの間に、その有する家屋又は土地でその年1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産で(4)の要件(a)から(d)のいずれかに該当するものを譲渡すること。
②その個人がその譲渡に係る契約を締結した日の前日においてその譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の残債を有すること。
③繰越控除する各年分の合計所得金額が3,000万円以下であること。
④譲渡先が、その個人の配偶者その他特別の関係がある者ではないこと。
特例を受けることができる損失の限度額
この特例が適用される譲渡資産に係る譲渡損失のことができる金額は前の繰越控除の場合と同じですが、契約締結日の前日におけるその譲渡資産に係る住宅借入金等の残債の合計額からその譲渡資産の譲渡価額を控除した差額が限度となります。